【デンマークの高齢者がもつ魔法のランプ】**ブックレビュー「寝たきり老人のいる国いない国(2)」
大熊由紀子さんの著書「寝たきり老人のいる国いない国」ブックレビュー(1)では、朝、昼、晩、来てくれるヘルパーさんのことをお伝えしました。
でも、ヘルパーさんがいないときに、
お年寄りの一人暮らしで、何かあったらどうするのでしょう?
お年寄りは、胸から魔法の小箱のようなペンダントや、
腕には、Apple Watchのような、押せばSOSを送れる魔法のランプを持っているのです。
そのボタンを押すと、ホームヘルパーセンターの詰め所から、屈強な大男が二人も飛び込んできてくれることも。
まるでアラジンの魔法のランプをこすると現れるジーニーのようです?
でも、日本のように、「緊急事態でもないのに救急車を呼ぶな!」と叱られることはありません。
具合が悪いときはもちろん、
トイレに連れて行ってほしいとき、
なんだか寂しくて話し相手がほしいとき、
どうしても見たいテレビがあるので、ヘルパーさんはそれが終わってから寝かしつけに来てと頼みたいとき、
など、日本の常識の緊急とはかけ離れてのです。
でも、ひとりひとりの気持ちにより添って考えれば、どれも切実なお願いです。
「安心」や「しあわせ」は、こうした小さな望みが、暖かく受け入れられ、積み重なっていったときに得られるものです。
96才のお年寄りが、身の回りのことができなくなっても、「思い出いっぱいの我が家で」一人暮らしを続けることができるのです。
デンマークでは、素晴らしいプライエム(日本語に無理に訳せば老人ホーム)がありましたが、今では、老後は自宅の一人暮らしへと移行しています。
ひとりひとりの生活の場へ、医師やホームヘルパーが出向いていくのです。
デンマークでは、福祉は、地方分権で、
住民の声をよく聞いて、さらによいサービスができるように、
市町村が責任を持っています。
お年寄りや、家族が公共サービスを受けるために、
県や、国レベルの省庁に書類を出さなければならないような面倒なことはありません。
そして、身近にいてくれるホームヘルパーさんたちの仕事は、
お年寄りのひとりひとりが、
何を望んでいるのか、どうしたらしあわせを感じることができるのかを考え実行すること。
ある訪問看護師の方の言葉
「私の仕事は探偵みたいなもの。
だれが私を必要としているか。
何をすれば、
その人の毎日が
生き生きできるようになるか、
それを探して歩くのが仕事なの。」
低賃金で、重労働にあえいでいる日本の介護福祉士の労働環境を考えると、あまりに遅れていることを痛感します。早くなんとかしなければ、そんな気持ちになります。
次回は、デンマークの医療について。
大熊由紀子さんの著書「寝たきり老人のいる国いない国」をぜひお読み下さい?
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