書評【人新世の「資本論」④〜資本主義に変わる地球を救うもの「コモン」】

持続可能な世界

33歳の天才経済学者・斎藤幸平さんの、人新世の「資本論」4回目、

いよいよ、最後の提案、

それは、

「コモン」という第三の道、

人々に共有され、管理されるべき富のことです。

 

日本の政治は、「小さな政府」を作ろうとしています。

 

郵便も、鉄道という市民の交通手段も、多くのものを民営化し、

なんと、いまでは、人間の生存に不可欠な、

「水」さえも、民営化し、

人々の生活の基盤さえも、自由競争にゆだねようとしている、このシステムの対極にある、

 

 

「大きな政府」それが「コモン」の概念です。

 

ここで、勘違いする人が多いのは、それは、共産主義のような、一党独裁の国になるのではないかという、恐怖です。

 

しかし、私は、民主主義と、資本主義は、切り離して考えるべきだと思います。

 

共産主義、軍国主義の国々は、確かに、

独裁政治、民主主義国家ではありません。

 

しかし、「コモン」は、民主的に運営することができるのです。

 

日本に比べて、はるかに大きな政府を作っている、

世界一幸せな国、デンマークなどの、北欧をみればわかると思います。

 

「コモン」は、

水や、電力、住居、医療、教育、

などの、人が人間らしく生きていくために欠かせない社会的インフラのみを、

公共財として、

民主的に市民が管理、改善していくという発想です。

 

そして、

地球を「コモン」として民主的に管理する、

ことを究極の目的とするのです。

資本主義は、独占したいという欲望から始まった。

かつては、人類の多くは、自給自足で暮らしていました。

 

アフリカや、南の国では、

豊かな、様々な作物を、みんなが自由に、いつでも、食することで、

健康な生活を送っていたことでしょう。

 

ところが、イギリスに始まる、

植民地支配によって、

これらの国々は、先進国の人々が食べたいもの、必要なものを栽培させられるようになります。

 

コーヒーのみを、大規模農場として作り始めたりしたので、

広大な土地が、コーヒー園と化してしまい、

多様な植物が、育つことができなくなってしまい、

途上国の人々は、お金を得るために、働かなければならなくなりました。

 

コーヒーを、先進国の人々に販売して得られる、

わずかなお金で、食べ物を買わなければならなくなったのです。

 

他にも、アボガドや、綿花など、様々な先進国の人々のための作物だけを作らせられるようになってきました。

 

先進国の独占、資本主義の始まりです。

 

また、先進国の市民でさえ、例外ではありませんでした。

 

昔は、山々の実りを、人々は自然に受け取って暮らしていました。

 

ところが、資本主義の「独占」が始まり、

土地は、誰かの所有物となり、

 

その実りを取ることは、

犯罪となってしまいました。

 

共有の土地がなくなった人々は、食べ物を購入するために、

都市へと流れ込み、

安い労働力として、

資本主義の、下層に暮らすことを強いられるようになったのです。

 

 

少数の独占者が裕福に暮らすためには、

安い労働力、

搾取できる自然が必要です。

 

こうして、自然破壊は、歯止めをかけることができないほどに進んでいきます。

 

 

電力にしても、

潤沢にあった水力を使うことをやめ、

石炭、石油による発電を始めたのは、

希少価値があるものを独占するために、意図的になされたとさえ、

斎藤さんは、述べています。

 

私は、人間というのは、マウンティングによる快感から逃れられないのかという、悲しい思いになりました。

 

独占者(勝者)になるためには、

その下に、大勢の搾取される者(負ける者)が必要となります。

 

しかし、

この温暖化による地球の危機は、

やがては、独占者たちにも訪れるのです。

 

自然が、今こそ、

人間も、自然の一部に回帰せよ!

競争をやめよ!

と、言っているような気がします。

 

そして、際限のない欲望と利益を求める、資本主義を終わらせ、

地球全体を、「コモン」として、全ての人で分かち合うことこそが、

生き延びることができる唯一の道だと思います。

 

 

 

 

 

 

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