@今週の洋楽 ボブ・ディランBob Dylan 親指トムのブルースのように Just Like Tom Thumb’s Blues 重力が衰えるとき When Gravity Fails

今週の洋楽 ぶろっこり

音楽大好きの ぶろっこり が、気ままに気になる気分のミュージックをお送りする @今週の洋楽 。

前回の「アズ・イット・ワズ As It Was 」ハリー・スタイルズ Harry Styles の歌詞の中にある gravity という単語ですが、訳していて?と疑問に思ったことがあります。ということで今回は、gravity にまつわる曲、ボブ・ディランBob Dylan 「親指トムのブルースのように Just Like Tom Thumb’s Blues」をピックアップ。

ぶろっこりは、gravity といえば、”重力”と思っていましたが、以前 ハヤカワ文庫のジョージ・A・エフィンジャー著「重力が衰えるとき When Gravity Fails 」を読んだときに、こんな意味もあることを知りました。

重力が衰えるとき When Gravity Fails ジョージ・アレック・エフィンジャー George Alec Effinger

おれの名はマリード。アラブの犯罪都市ブーダイーンの一匹狼。小づかい稼ぎに探偵仕事も引きうける。今日もロシア人の男から、行方不明の息子を捜せという依頼。それなのに、依頼人が目の前で撃ち殺されちまった!おまけになじみの性転換娼婦の失踪をきっかけに、血まなぐさい風が吹いてきた。街の秩序を脅かす犯人をつかまえなければ、おれも死人の仲間入りか。顔役に命じられて調査に乗りだしたものの、脳みそを改造した敵は、あっさりしっぽを出しちゃくれない。…実力派作家が近未来イスラーム世界を舞台に描く電脳ハードボイルドSF。

When Gravity Fails is a cyberpunk science fiction novel by American writer George Alec Effinger, published in 1986.It was nominated for the Nebula Award for Best Novel in 1987 and the Hugo Award for Best Novel in 1988. The title is taken from “Just Like Tom Thumb’s Blues”, a song by Bob Dylan: “When your gravity fails and negativity don’t pull you through”.

When Gravity Fails は、アメリカの作家George Alec Effingerが1986年に発表したサイバーパンクSF小説である。1987年に星雲賞の最優秀小説賞、1988年にヒューゴー賞の最優秀小説賞にノミネートされた。
タイトルはボブ・ディランの歌「Just Like Tom Thumb’s Blues」から取られている。「When your gravity fails and negativity don’t pull you through」(重力が失われ、否定的な気持ちがあなたを引っ張ってくれないとき)。

作者は亡くなってしまいましたが、このシリーズ好きでした。ちょっとかっこ悪い探偵と未来のアラブ世界という組み合わせが良かったですね。あまり知られていないハードボイルド・サイバーパンクSFですが、おすすめです。

ハヤカワ文庫のジョージ・エフィンジャー著「重力が衰えるとき When Gravity Fails 」の訳者あとがきには、こんな風に書かれています。

題名の”重力”は、物理的な重力ではなくて、個人の人格、あるいは社会秩序をまとめ上げている心理学的な力のメタファーらしい。その力が衰えるとき、すべては崩壊するわけである。

ためしに、gravity を辞書で調べてみると、こんな感じでした。

1 a 重大さ,容易ならぬこと; (罪・病気などの)容易ならぬこと,重さ.
the gravity of the situation 事態の重大さ.
b まじめさ,真剣さ,厳粛,沈着.
with gravity まじめに.
2 a【物理学】 地球引力,重力; 引力 《略 g》.
b【物理学】 重力加速度 《略 g》.
c  重量,重さ.

negativity (電気的)陰性も、ここでは、 虚無主義・ニヒリズム nihilism や 悲観主義・ペシミズム pessimism といった意味で使われているように思えます。うーん、さすが、ノーベル文学賞。

ということで、前置き長すぎですが、曲の方いきましょう。

1965年のアルバム「追憶のハイウェイ61 Highway 61 Revisited」1965年 収録曲です。

Bob Dylan – Just Like Tom Thumb’s Blues (Official Audio)

 

Just Like Tom Thumb’s Blues Bob Dylan 1965

When you’re lost in the rain in Juarez, and it’s Easter time too
And your gravity’s fails and negativity don’t pull you
Just don’t put on any airs when you’re down on Rue Morgue Avenue
They got some hungry women there and they’ll really make a mess outta you

Now if you see Saint Annie, please tell her thanks a lot
I cannot move, my fingers they are all in a knot
I don’t have the strength to get up and take another shot
And my best friend, the doctor, he won’t even tell me what it is I’ve got

Sweet Melinda, the peasants call her the goddess of gloom
She speaks good English and she invites you up into her room
And you’re so kind and careful not to go to her too soon
And she steals your voice and leaves you screaming at the moon

Up on Housing Project Hill it’s either fortune or fame
You must pick one or the other, neither of them are to be what they claim
If you’re lookin’ to get silly, you better go back to from where you came
Because the cops don’t need you, and man, they expect the same

Now all the authorities, they just stand around and boast
How they blackmailed the sergeant-at-arms into leaving his post
And picking up Angel, who just arrived from the coast
Who looked so fine at first, but left looking just like a ghost

I started out on Burgundy, but soon hit the harder stuff
Everybody said they’d stand behind me when the game got rough
Yea, but the joke was on me, there was nobody even at my bluff
I’m going back to New York City, I do believe I’ve had enough

提供元: Musixmatch
ソングライター: Bob Dylan
Just Like Tom Thumb’s Blues 歌詞 © Special Rider Music, Universal Tunes

いつものぶろっこり訳です。

フアレスの雨に迷った上に 季節はちょうどイースター
人格が崩壊し ペシミズムでも切り抜けられない
そんなときはな モルグ通りなんかでかっこつけたりするなよ
腹を空かせた女どもがよってたかって おまえをめちゃくちゃにしちまうぜ

聖女アニーに会ったら ありがとうと伝えてくれ
俺は動けないんだ 指一本動かせない
立ち上がって注射を打つ気力もない
俺の親友の医者も 何も教えてくれない

愛しのメリンダ 農民たちは彼女を闇の女神と呼ぶ
彼女は英語が上手で おまえを部屋に招くのさ
おまえはとても優しく注意深い 彼女がすぐに行かないようにね
彼女は声を奪って おまえは月に向かって吠えるのさ

公営住宅の丘には 幸運か名声が転がっている
どちらかを選ぶんだ どちらも言うほどのものではないけどね
バカになりたいなら 故郷にでも戻ったほうがいい
警察はおまえなんかいらないし 他の奴らも同じさ

今、偉そうな奴らが 立ちどまって自慢している
どんなふうに守衛官を脅して 首にしたのかを
海岸にたどり着いた天使を拾いあげたのさ
最初は元気そうだったのに 帰るときは幽霊みたいだった

バーガンディから始めたけど すぐにもっときついやつをやった
上手くいかなくなったら 俺を応援してくれるといったのに
俺の方が笑いものさ 誰も問い直してなんかくれない
俺はニューヨークへ帰る もうたくさんだ

親指トムはイギリス童話に出てくる親指大の主人公のこと、ファレスはメキシコの町の名、Rue Morgue Avenueモルグ通りはエドガー・アラン・ポーの短編推理小説「The Murders in the Rue Morgue:モルグ街の殺人」から、バーガンディーはフランス・ブルゴーニュのワインの銘柄、hitは麻薬や覚せい剤を打つという意味。タイトルは、ランボーの「我が放浪 Fantaisie」の一節 “Tom Thom in a daze” からとられたとも言われています。

メキシコの町に迷い込んで、貧しさや病、娼婦たちに腐敗した権力者や薬物などにふれて、はやくニューヨークに戻りたいといった内容なのでしょうか。

『ザ・カッティング・エッジ1965-1966(ザ・ブートレッグ・シリーズ第12集)』のミュージック・ビデオ。ヨーロッパ・ツアーの映像を使用して制作され、ジョン・レノンやフランソワーズ・アルディの姿もみられます。音源は所収のテイク3が使われています。

歌詞の各フレーズが見事に韻を踏んでいるのも、この曲がたくさんのシンガーにカヴァーされている理由かもしれません。

 

最後までご視聴いただきありがとうございました。

それでは、また。#294

 

 

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